ワークフローの自動化によって人間の生産性は向上します。
コンピュータの驚異的な処理能力やストレージ能力を利用すれば、人間は自分たちの能力を高め、生産性を向上させることができる。- Darrel M. West 氏、『The Future of Work』 (19 ~ 20 ページ)、Brookings Institution Press、Kindle 版。自動化というと、一般的には擬人化ロボットを想像する方が多いでしょう。たとえばそれは、トヨタのヒューマノイド ロボット「T-HR3」のようなマシンのこともあれば、生体力学の観点から人間の腕をモデルとした産業用ロボット「アーム」のこともあります。この種のロボットは見た目を人間に似せてつくられ、人間の動きをそのまま落とし込んだ一連の機械的動作によってタスクをこなします。一方、情報ベースのタスクを自動化する場合は、人体の生体力学をモデルにするのではなく、ワークフロー自動化ツールでデータベースとアプリケーション間のデータ フローを生み出します。ワークフロー自動化は現代のエンタープライズの原動力となります。
ワークフロー自動化とは
ワークフローの自動化では、API コネクターを使用して企業が業務の遂行に使用する多数の SaaS アプリケーションとマイクロサービスを接続します。これにより、自動化でワークフローの次のステップを実行する合図となる「イベントがトリガー」され、ビジネス プロセスを通して自動的にデータ フローが生み出されます。場合によって、人間の作業者がワークフローのステップ (IT 部門への申請の承認や、求職者の採用判断など) を完了させるためにこのプロセスに加わることも、人の介入を必要とせず自動化によってワークフローが完了することもあります。ワークフロー自動化は、特定のビジネス プロセスにおける固有のニーズに合わせて設計し、調整することが可能です。たとえば、人事の自動化 (従業員のオンボーディングなど)、財務の自動化 (リアルタイムのレポート作成など)、マーケティング/営業の自動化 (潜在顧客データの最適化、ルーティングなど) のほか、さまざまな用途に利用できます。
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なぜ今ワークフロー自動化が重要なのか
現代の企業は幅広い機能の実行や促進のためにさまざまなアプリケーションから成る大規模なテクノロジ スタックを抱えています。営業用には Salesforce、人事用には Workday、サポート用には Zendesk といったように、専用アプリケーションで各部門の業務遂行を促進しています。スタックに含まれる各アプリケーションは、ビジネス上の特定の問題に対するポイント ソリューションや、特定部門のハブとしての役割を果たします。有益、かつ業界標準であっても、このようなアプリケーションはデータのサイロ化につながってしまいます。ビジネス部門のユーザーは日々各自の決まったアプリケーションの中で仕事を行い、エンタープライズ全体の透明性に乏しい状況です。
さらに、部門に関係なく多くのビジネス プロセスが複数のアプリケーションにわたっているため、ワークフローを自動化しなければ、各プロセスを手作業で完結することになるでしょう。手作業によるデータ入力ではミスが発生しやすいうえに非効率で、いわゆる「ごみを入れれば、ごみしか出てこない」状態に陥りがちです。
企業がそれらの専用ツールを統合し、連動してプロセスを遂行するよう調整できれば、エンタープライズ オートメーションの潜在能力を発揮できます。エンタープライズ規模のワークフローの自動化によって、それぞれ設計の異なる SaaS や、オンプレミスのアプリケーション、データベース、マイクロサービス間でデータ フローの調整が行われます。
統合はワークフロー自動化への第一歩
統合とは、企業のテクノロジ スタック群をつなぐ帯のようなものであり、異なる要素をつなぐ接続性ともいえます。また自動化とは、動作とプロセスが調整された状態であり、まるで心臓に鼓動を打ち続けるよう指示したり、手足に連動するよう指示したりする神経系のようなものです。ワークフローの自動化を実現するには、統合という基盤が必要になります。エンタープライズ アプリケーション統合ソリューションにまだ投資していない若い企業や成長著しい企業の場合、統合されていない状態が従業員の能力とテクノロジ スタックの両方のパワーを最大限引き出すうえで大きな障害となっていることが考えられます。企業がワークフロー自動化の実現に向けてアプリケーションを統合する方法はいくつかありますが、時代遅れのツールも少なくありません。企業が求めているのは、エンタープライズ アプリケーションの統合とビジネス プロセスの自動化をどちらもエンタープライズ規模で実行できるツールです。
利用できるワークフロー自動化ツールの種類
ワークフロー自動化といっても種類はさまざまで、現在、ワークフロー自動化ツール市場には数多くの選択肢が存在します。
タスク自動化
タスク自動化ツール、つまり「iSaaS」ツール (サービスとしての統合ソフトウェア) は、従来の iPaaS、つまりエンタープライズ オートメーションよりもセキュリティやガバナンスの面で劣る一方で、各ユーザーがアプリケーション間で簡単な日常のタスクを自動化するために利用できます。
従来の iPaaS
従来の iPaaS ツールには技術的なスキルや知識が必要なので、運用は社内の IT 部門によって行われます。従来の iPaaS ツールの場合、最新のクラウドベースのエンタープライズ オートメーション ツールのようなリアルタイムの処理ではなく、オンプレミス展開で定期的なバッチ処理が用いられる傾向にあります。
SaaS アプリケーションに搭載されている組み込みのプロセス ビルダー
Slack や Salesforce といった主要なハブとなる SaaS アプリケーションには、組み込みのプロセス ビルダーが搭載されているものもあります。これらの組み込みツール (Workday Journeys、ServiceNow Flow、Slack Workflow Builder、Salesforce Process Builder など) を使用すると、ユーザーはアプリケーション内の一連のタスクを連結することはもちろん、外部ソースからデータを取得することも可能です。しかしある時点でユーザーは、そのプラットフォームの限界に気付くかもしれません。それが 1 つのアプリケーション内だけで一元化されたものだからです。これらのツールはエンタープライズ規模の自動化よりも、個人のタスクを自動化するのに役立つでしょう。
RPA
RPA (ロボティック プロセス オートメーション) は、手作業によるデータ入力のようなタスクに適した UI ベースの自動化です。ただし、RPA は UI の変化にうまく対応できません。以前はRPAの普及が加速していましたが、現在はAPI ベースの自動化がより注目されるようになり、現在多くの企業で使われている SaaS アプリケーションの連携にRPA よりも適しています。
エンタープライズ オートメーション
エンタープライズ オートメーションでは、API 接続を使用して各種のアプリケーションを統合し、エンタープライズ全体のビジネス プロセスに合わせてワークフロー自動化をスケーリングします。エンタープライズ オートメーションならではの特徴は、エンタープライズ アプリケーションの統合とビジネス プロセスの自動化をどちらもエンタープライズ規模で実現できる点です。
ROI の観点からワークフロー自動化に期待できること
A good way to assess your ROI for a given workflow automation is to compare the annual cost of your current 特定のワークフロー自動化の ROI を評価する際には、現在の運用にかかっている年間コストと自動化にかかるコストを比較するとよいでしょう。統合プラットフォーム (iPaaS) とエンタープライズ オートメーション ツールは、年間サブスクリプション ベースで提供されることが一般的です。ワークフロー自動化のメリットによる効果は外側へと広がり、ビジネスの運用や企業文化に多面的影響を及ぼし、いくつかの点で単純な定量化の範囲を超えます。
たとえば、自動化の ROI として以下のようなものが考えられます。
- 運用効率の向上
- データ サイロの軽減または解消
- 顧客体験や従業員体験の向上
- 毎日や毎週の定期的なデータ同期ではなく、リアルタイムでのビジネス プロセスの運用
- データの正確さの向上
- 戦略やイノベーションなどの重要な業務への人的リソースの振り替え
ワークフロー自動化で期待される ROI の全体像をより正確に把握するために、特定の企業の実際のユース ケース例をいくつか見ていきましょう。
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エンタープライズ オートメーション を使用したワークフロー自動化のユース ケース例
Fintelligent
Fintelligent 社は、企業向け財務・会計アウトソーシング サービスを提供する企業です。たとえば、日用消費財の販売や小規模な e コマース事業を手掛ける成長し始めたばかりの企業なら、Fintelligent 社が「実質的な CFO」となってビジネス成長を後押ししてくれます。同社では、財務レポートの作成を加速させるためにワークフロー自動化を取り入れています。ワークフロー自動化を利用しなければ、毎週 CSV からのバッチ インポートを手動で設定することになるでしょう。現在、販売・請求リポジトリ (BrickFTP) のデータが Intacct に自動的にインポートされるようにしています。
エンタープライズ オートメーション プラットフォームを使用したワークフローの自動化における同社の ROI は、以下のとおりです。
- ワークフロー自動化によって週に 6 ~ 7 時間 (月に 28 時間) の短縮
- 従業員がより価値の高い業務に集中できるようになった
- 財務に関するリアルタイムの洞察を顧客に提供 (週単位の洞察からの改善)
- 人為的ミスの低減
Nutanix
Nutanix 社は、ハイパーコンバージド インフラストラクチャ市場を牽引するクラウド コンピューティング ソフトウェア企業です。同社では、従業員がプロセスを完了させるために各種アプリケーションへのログイン・ログアウトを繰り返す必要がないよう、ワークフロー自動化を採用して Slack に業務プロセスを一元化しました。そしてそれを ServiceNow チケットのトリアージと VM のプロビジョニングに利用しています。
これにより従業員は、Slack のインターフェースから VM のプロビジョニングに対応できるようになりました。この新しい VM プロビジョニング プロセスでは、エンジニアは Slack で VM の申請を行います。そうすると、ワークフロー自動化によって VM を申請するための新しい ServiceNow チケットが作成され、エンジニアの VM 使用状況の評価が行われます。それが標準の申請であれば、その承認が自動的に行われ、Slack を通じて申請者に返送されます。また自動化では、VM のプロビジョニングをどのクラスターから行うのが最適かを判断することで、VM のプロビジョニングが最適化されます。申請に手作業によるレビューが必要な場合は、レビュー担当者が Slack からその作業に対応します。さらに、ServiceNow チケットが新規に発行されると、従業員は Slack から通知を受け取ります。チケットの割り当ては Slack を通じて行うことが可能です。
エンタープライズ オートメーション プラットフォームを使用したワークフローの自動化における同社の ROI は、以下のとおりです。
- VM のプロビジョニングを加速させることで価値創出に要する時間を短縮
- VM の申請者が新しい VM を 10 分以内に取得できるようになった
- VM の承認担当者の時間を週に 6 時間節減
- ServiceNow チケットの割り当て率 100% を達成
- チケットの割り当てにかかる時間を 2 分の 1 に短縮
顧客データに基づく自動化を利用したマーケティング キャンペーン例
フルーツを使ったブーケとギフトを手掛けるオーストラリア企業、Edible Blooms 社は、Hoosh Marketing 社のコンサルタントの協力を得て、Marketo と Magento を利用した自動マーケティング システムを開発しました。顧客の多くは誕生日や記念日といったイベントにその食べられるフルーツブーケを贈るので、毎年カレンダーの同じ日に利用することになります。そこで Hoosh Marketing 社は、そのプロセスを自動化するためにエンタープライズ オートメーション プラットフォームを取り入れることにしました。毎日、1 年と 10 日前 (つまり、375 日前) に購入履歴のある顧客がいないか、Magento の顧客データのスキャンが自動的に実行され、見つかった顧客を新たな Marketo キャンペーンに加えて電子メールが送信されます。さらにその 8 日後に、フォローアップとして再び電子メールが自動送信されます。このワークフロー自動化への投資において、Edible Blooms 社は 20% の ROI を達成しました。「シンプルかつ独創的」と、Hoosh Marketing 社の創立者である Fab Capodicasa 氏はこの自動化ソリューションを評します。
国内でのユースケース
日本国内でもユーザーが増え、 こちらのページより国内ユーザー様事例をお読みいただけます。
企業でエンタープライズ オートメーション を実現する方法
エンタープライズ オートメーション プラットフォームである Workato を使用すると、企業で各種アプリケーションを統合して、ワークフロー自動化を実現できます。Workato は、Nutanix 社、Edible Blooms 社、Fintelligent 社をはじめ数多くのお客様にサービスを提供しています。企業でワークフロー自動化を実現する方法について、詳しくは弊社チームがご説明いたします。