一般的な企業で使われている SaaS アプリケーションは 100 種類を超えるとされ、その数は今も前年比 2 桁の成長率で増え続けています。
そして、IT 部門から財務、人事、営業まで、社内の各部門で日常業務を管理するために導入されるアプリケーションの数が増加することで生まれているのが、「データのサイロ化」 (部門ごとに収集されたデータが部内者にしか閲覧できない状態) です。そうしたデータ サイロはさまざまな問題の原因となります。業務を進めるうえで従業員が何度もデータを入力し直し、都度アプリケーションを切り替える必要があったり、仕事の効果的な遂行に必要なデータがそろわないといった問題です。
そこで登場するのが、iPaaS (サービスとしての統合プラットフォーム) です。iPaaS を使えば、社内のすべてのアプリケーションを接続できます。そうすれば、システム間での自由なデータ移動が可能になり、これまでにあったデータ サイロが実質的に解消されます。 理想的なソリューションですよね。
しかしこれは表面上の話でしかなく、iPaaSをちゃんと理解しビジョンと戦略を持って採用することが、今後どんどん進むデジタル化社会の中で、各部門での最適化・自動化のみに止まらず、組織が成長し続けるためには非常に重要です。
本ガイドでは、iPaaS の機能、メリット、欠点のほか、企業が iPaaS を超え、包括的な統合主導型自動化プラットフォームを使用すべき理由など、iPaaS について押さえておくべきポイントをすべてご紹介します。
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iPaaS とは?
iPaaS (Integration Platform as a Service)とは、クラウドやオンプレミスのアプリケーション間の統合環境を築き、相互のデータ フローを生み出し、それらのデータ フローを展開する機能を備えた、クラウドベースのプラットフォームのことです。
iPaaS とは何かを十分に理解したうえで任意の iPaaS の評価を円滑に行うには、Gartner 社が定義する iPaaS の主要機能を確認しておく必要があります。そちらを要約すると、iPaaS の要件として挙げられているのは以下のような機能です。
- API エンドポイント間で特定のデータを移動できる
- データが一貫した形式で表示されていない場合でも、それらのデータをアプリケーション間でマッピングできる
- 他のシステムにとってより価値の高いものになるような形でデータを変換できる
- 収集されるデータの質を評価し、必要に応じて向上させることができる
- 認証や承認など、さまざまな API ポリシーを適用できる
iPaaS に対する理解を深めるには、いかに iPaaS が他のクラウドベース サービスのビジネス モデルを補完するかや、それらのモデルとの違いを知っておく必要があります。
サービスとしてのソフトウェア (SaaS): インターネット上でホストされるソフトウェアのことです。ベンダー自身がサーバーやデータ、コードを管理し、そのソフトウェアの定期的な保守や改善を行う必要があります。日常的に使用されている一般的なテクノロジの多くは SaaS に分類され、Salesforce や Slack なども SaaS です。
サービスとしてのプラットフォーム (PaaS): 開発者がインフラストラクチャ要件を気にせず、アプリケーションのビルドや管理、展開を行うことができる環境を提供するものです。
サービスとしての統合 (IaaS): Gartner 社の定義によると、「サービスとして提供される統合機能 (安全な B2B コミュニケーション機能、データやメッセージの翻訳機能、およびアプリケーション、データ、クラウド API 用アダプター)」のことです。
以下は同じビジネス モデルに基づくものではありませんが、組み込まれることで iPaaS を構成するため、ご紹介しておきたいと思います。
エンタープライズ サービス バス (ESB): ユーザーが特定の規則に基づいてアプリケーションを接続できるアーキテクチャのことです。iPaaSとの違いは、こちらの記事もご覧ください。
エンタープライズ アプリケーション統合 (EAI): ミドルウェア フレームワークを使用してオンプレミスとクラウド上のシステムを接続します。これにより、相互のデータの移動が容易になります。
今回のトピックからは外れますが、以下もiPaaSとの違いを比較されることがあるためご紹介しております。
ロボティックプロセスオートメーション (RPA): 人の行う定型作業、主に画面上のユーザーインタフェースで行う作業や処理を人間に代わって実行する技術です。 (おすすめ記事:「RPAとiPaaSで実現するエンドツーエンド業務最適化のための自動化」)
iPaaS の重要性
iPaaS についてご理解いただいたところで、iPaaSを企業に導入することの重要性についていくつか理由を見ていきたいと思います。
1. 大幅な時間の節約になり、業務効率化につながる。
たとえば営業部門に所属していて、見込み顧客に関する情報を検索するために以下のような複数のアプリケーションを使用する必要があるとします。
- Salesforce (特定アカウントの連絡先を確かめる)
- Marketo (マーケティングから得たメールを分析する)
- Intercom (ライブ チャットでの会話の内容を確認する)
- Eventbrite (過去に出席したイベントについて調べる)
一度に複数の見込み顧客をターゲットにしている場合、それぞれの見込み顧客の情報を検索するのに都度アプリケーションを切り替えるこのようなプロセスに拡張性がないことは明らかです。
そこで iPaaS ベンダーを利用すれば、関連するすべての情報を単一のプラットフォーム上で表示できます。上記の例で言えば、Salesforce で特定の見込み顧客について調べ、マーケティングから得たメールや過去のライブ チャットの会話などを残らず確認することが可能になるということです。
2.リアルタイムでのデータの移動が可能になる。
使用するアプリケーション内にあるデータへのアクセス以外にも、従業員はリアルタイム データを確認できる必要があります。ただしこれは、顧客の問題を速やかに解決する、あるいは潜在顧客が現れたら即座に対応するといった、従業員が特定の行動をうまく取れるようにするためのデータがあってこそです。
リアルタイムで統合されるクラウド上のアプリケーションとオンプレミスのシステム間でデータを共有できる iPaaS ソリューションなら、この点にきちんと対応できます。
3.ユーザーのデータが保護され、コンプライアンスを維持できる。
iPaaS では、アクセスを管理することでデータを保護できます。また、不正検出機能や侵入検知機能も備えています (一元化されたプラットフォームを使用しているので発見と対応が容易になります)。
これらの防御策によって、ユーザーは顧客からの評判を守るだけでなく、GDPR、CCPA、HIPAA といった法規制へのコンプライアンスも維持できます。
4.人為的ミスを防ぐ。
アプリケーション間のデータ転送を手動で行うプロセスでは、どうしても人間特有のミスが起こりがちです。ユーザーに代わってデータが自動転送される iPaaS なら、そうしたミスを軽減できます。
関連記事: データの統合が重要な理由
5.従業員と顧客の満足度が高まる。
必要なデータへのアクセスと利用が容易になるため、従業員は業務のなかで極めて単調でつまらない作業にかける労力を、戦略的でやりがいの持てる作業に振り向けることができます。ひいてはそれが、日常業務における満足度の大幅な向上につながるはずです。
さらには顧客もメリットを得ることになります。なぜなら、問題が発生した場合に従業員が顧客に素早く対応し、顧客の問題をより慎重に解決できるようになり、請求書などの重要な処理におけるミスも減るためです。加えて、従業員全体の満足度が上がれば、ほとんどの場合に顧客体験も向上することが調査結果からわかっています。
6.統合環境における問題に気付き、トラブルシューティングを行いやすくなる。
統合エコシステムを一元管理できるビューを提供することで、iPaaS プロバイダは、ユーザーがシステム間でのデータ損失やデータ不整合といった問題を容易に発見できるよう支援します。
関連記事: iPaaS がもたらすメリットをすべて紹介
7.事前にビルドされた一連のコネクターを提供。
開発者にとって、アプリケーションの API に応じてビルドを行うプロセスには時間がかかる可能性があります。接続しようとするアプリケーションが複数にわたる場合や、探している統合機能がかなり複雑な場合にはなおさらです。
その解決策として、多くの iPaaS ソリューションには事前にビルドされたコネクターが用意されているため、ユーザーはアプリケーションの API エンドポイントを認証だけで利用できるようになります。
iPaaS が現代のエンタープライズのニーズに対応していない理由
iPaaS は有益であると同時に、2 つの大きな制約を抱えています。拡張性に欠ける点と、プロセスを自動化できない点です。これらの短所は、弊社が「State of Business Technology」レポートにおいて明らかにした以下のような驚くべき統計データの理由になると思われます。
統合機能やワークフロー自動化機能を取り入れた企業のうち、「非常に満足している」と答えた割合はわずか 38% にとどまる。
では、それぞれの短所をさらに詳しく見ていきましょう。
部門間での拡張性や有効性に欠ける
iPaaS を使用するには技術的な予備知識がいるため、扱える人の数が限られてしまいます。下記の図は、左がiPaaSを使用できる部署、右が出来ない部署ということになっています。これは、多くのIT専門家のいない部署でのiPaaSの活用はハードルが高いいうことを示しています。
そして、社内で導入されるアプリケーションが増えるほど、あらゆるアプリケーションの統合プロセスが遅れることが予想されます。この問題がすでに広がっていることは、当社のレポートから明らかです。「アプリケーションの統合とワークフローの自動化を進められないまま抱え込んでいる」と答えたビジネス テクノロジ担当者の割合は、5 人中 4 人以上 (82%) にのぼります。
そのわずかな iPaaS ユーザーでさえ、各部門のエキスパートではありません。つまり、それぞれのチームにメリットをもたらすワークフローを構築する機会を逃している可能性があるということです。もっとも、「iPaaS ユーザーを信頼して、メリットをもたらす統合機能の構築やプロセスの自動化を任せている」と答えた割合が半数 (52%) にとどまるところを見ると、各部門がこの問題をよく理解していることがうかがえます。
ワークフローを自動化できない
統合機能と自動化機能の構築にそれぞれ別のプラットフォームを使用する時代はもう終わりつつあります。それゆえ、ビジネス ユーザーはこの統合と自動化、 2 つの作業を単一のプラットフォームで実行できようになることを求めています。
ところが従来型の iPaaS では、ワークフローの自動化機能を構築することはできません。なぜなら、ビジネス イベント (トリガー) の発生に備えてユーザーのアプリケーションを「リッスン」し、特定のイベントに基づいてリアルタイムの結果 (アクション) を提供する機能を備えていないためです。
この制約から、iPaaS ではボットを使うこともできません。ボットがあれば、ワークフロー自動化の有益性が一層高まります。各種アプリケーションからの情報を、Slack などのコミュニケーション プラットフォームに伝えることができるためです。そうすれば、チームが必要なデータを素早く簡単に得られるようになります。
iPaaS の未来像: 「統合主導型自動化プラットフォーム」
統合主導型自動化プラットフォームとは、iPaaS の統合機能を備えたうえで、その欠点にもきちんと対応したプラットフォームです。以降では、その統合主導型の自動化プラットフォームに実装されている、理想的な機能をご紹介します。
コーディング不要
これは、民主化されたITプラットフォーム、いわゆるIT技術者でなくても誰でも使えるプラットフォームということになります。誰もがエンタープライズ向けの自動化 (EA) プラットフォームを用いて統合機能やワークフロー自動化機能を構築しメンテナンスまでできるようになる、ということです。 下記の図の様に、ITの知識度を問わず全部署のエンドユーザーがプラットフォームを利用可能になるイメージです。
その結果、ボトルネックが軽減され、プロセスの管理における組織の俊敏性が高まります。
また、エンジニアや IT スタッフが節約できた時間を、よりビジネス上重要な作業に割り振ることが可能になります。Fundbox 社の Sales Operations 担当責任者である Basile Senesi 氏はこの点について次のように述べています。
企業の統合機能と自動化機能の構築に利用できる組織はそれを使用して統合と自動化を構築できます
言い換えれば、企業が EA プラットフォームを使用してアプリケーション間を接続し、業務中に発生するイベントを監視し、それに応じて即座に自動的にプロセスを行うことが可能になったということです。
組み込みのボット フレームワークを実現
さまざまなボットを使用して、従業員が日常的に使用している、SlackやMS Teamsなどのコミュニケーション ツールで従業員と情報を共有できるようになります。ボットでは、アプリケーションからの情報を共有するだけでなく、人工知能 (AI) や機械学習を利用することで、チームに合わせてひときわパーソナライズされた便利な業務環境を作ることができます。
たとえば、AI を利用したボットなら、潜在顧客の見込み度を自動評価したり、その顧客の営業担当者を自動アサインしたりできます (どの担当者がより多くの潜在顧客を獲得できそうかや、その所在地などの条件で判断されます)。
関連記事: クラウドの統合機能について押さえておくべきポイントをすべてご紹介
極めて短期間での Go-to-Market を可能に
EA プラットフォームによって、1 週間以内にワークフローの観念化から実用化までを進めることが可能になります。その結果、社内の生産性が上がり、即応性が増すとともに、ビジネス テクノロジ チームをより適切に評価できるようになります (これは「評価されている」と感じているビジネス テクノロジ担当者の割合がわずか 18% にとどまることから、これは重要なメリットといえるでしょう)。
ユーザーが質の高い自動化機能を素早く構築できるコミュニティ レシピを提供コミュニティレシピを提供するため、高品質の自動化をすばやく構築できます
EA プラットフォームでは、他の組織がどの様にレシピを用いて自動化機能を活用しているか (複数のアプリケーション間で業務を進めるためにプラットフォームで使用されているワークフロー) を参考にすることが可能です。これにより、自動化機能のブレインストーミングを行うことはもちろん、コミュニティ内で他のユーザーが作成した自動化機能を直接コピーし、後からニーズに合わせてカスタマイズすることも可能になります。
限りない拡張性
EA プラットフォームはクラウド上で運用されるため、即座にプロビジョニングして、いつでも使用でき、保守の必要性はありません。
iPaaS の代わりに統合主導型自動化プラットフォームを使用すべき理由については、以下のように Workato の CEO である Vijay Tella がより詳しく説明しています。(英語)
Workato は唯一の統合主導型自動化プラットフォームを提供
Workato の経営陣は、将来を見据えた統合企業の立ち上げと構築を手掛けてきた経験を有しています。そのなかには、TIBCO や Oracle Fusion Middleware をはじめとする事例が含まれます。
これらの企業と連携するなかで、弊社はエンタープライズのニーズに完全に対応するよりパワフルなプラットフォームの観念化に乗り出しました。
その要件として挙げたのは、「クラウド上で構築されたもので、あらゆる種類のアプリケーション、データ、API を管理できるもの」、「ビジネス プロセスをエンドツーエンドで変革するためのワークフロー自動化機能の構築が可能なもの」、「IT 部門によるガバナンスの下で任意のビジネス ユーザーが統合機能や自動化機能を構築できるようにするもの」、そして、「AI を搭載したチャットボットを利用して、誰もがコミュニケーション プラットフォームで必要なデータにアクセスできるようにするもの」です。
弊社はこのビジョンを実現すべく、市場で唯一の統合主導型自動化プラットフォームを構築しました。それが「Workato」です。